2016年10月29日土曜日

菅木志雄 個展 ミラノ ピレリ ハンガービコッカ(Pirelli HangarBicocca )

先日、ミラノのピレリ ハンガービコッカ(Pirelli HangarBicocca )にてオープンした菅木志雄さんの展覧会「Situations」の様子をお伝えいたします。オープニング当日は、世界中から多くの方々がいらしており、プレビューでは菅さんによるアクティヴェイションも行われました。
ハンガービコッカ美術館は元々、鉄道の車庫、電気モーターのコイルの修理場所として使用されていた巨大な建物で面積が15000、天井の高さは20m以上ある巨大なスペースです。
今展示は東京都現代美術館のキュレーター長谷川裕子さんとハンガービコッカのディレクター・ビセンテ トドリとの共同キュレーションによる展覧会です。1969年からの作品23点(すべてインスタレーション作品)で構成された展覧会。
菅さんの壮大なスケールの作品が一同に見渡せる空間は、圧巻の一言でした。


「多分律」
「依存差」
「連界」
「包囲周閉」
「Fieldology」
25 x 25mに1500mのワイヤーで制作された「捨置状況」
アクティヴェイション

  
All Photo by Tsuyoshi Sato




下記リンクより、オープニング当日の展示の様子がご覧いただけます。

会期は2017年の1月29日まです。



2016年10月27日木曜日

第163回 音を楽しむ会

 今月の音を楽しむ会は、テノールの猪村浩之さん、ピアノの大坪由里さんです。


 今回は秋の風景というテーマで歌っていただきました。ちょうど外では木々が色づき始め、美しい季節になってきました。


 オペラなどで盛大な曲を歌う機会が多い猪村さんですが、最近では日本の歌の良さに目を向け、積極的に歌っているそうです。合唱曲で有名な木村牧子さんの曲を中心に歌っていました。


 大坪さんのピアノに猪村さんが朗読を合わせる曲もあり、言葉とピアノの表現の美しさに会場の皆さんも引き込まれていました。


 皆さんで一緒に歌う「里の秋」。和やかな雰囲気で楽しい時間になりました。 


 次回の音を楽しむ会は11月26日(土)、チェロの黒川正三さんとピアノの黒川文子さんです。お楽しみに!!

2016年10月21日金曜日

板室 2016年山装う便り

秋も深まり、全国で紅葉の季節が参りました。
板室も、例年より少し遅めの紅葉が美しい季節になりました。

早めに色づく木々が色を変え、まだじっとしている木々の緑と
美しいコントラストを見せてくれます。
今年の見頃は11月上旬まで続きそうです。



見上げると深山ダム方面の山は錦の装い。雲間から美しい色が望めます。


河原におりれば一面のすすきが風をうけてさらさらと音を立てています。
野菊とすすきは深い秋の装いを感じさせてくれます。


一枚の 紅葉 且散る 静かさよ
高濱虚子


板室の静けさの中で過ぎ行く秋を一歩一歩探しながら楽しむのは、
紅葉の名所を巡るのとはまた違う味わい深さがあります。

四季の楽しみのお知らせは大黒屋公式Facebookにて四季とお天気の会が
つぶやいております。どうぞ覗いてみてください。

ぜひお運び下さいませ。




2016年10月19日水曜日

青木悠太朗 アートを語る会

 
 昨夜は今月のサロン展示作家の青木悠太朗さんによるアートを語る会が行われました。
作品制作の背景、大黒屋での個展に向けてのお話や日々の生活から今後の展望などについてお話されました。


 床や台座に置く作品が多い青木さんですが今回の展示では壁に掛ける作品をメインに展示を構成。大黒屋に何度か下見に来るなかで、ギャラリーとは違う場だと感じ空間を活かす上でも壁に掛ける作品をメインに制作しようと決めたそうです。
黄土の壁に作品が掛かり、光が当たることによって魅力的な影も映し出されます。その影については青木さん自身意図していなかったところですが、「場との関係で新たに発見された部分だった」と青木さん。


 展示されている全ての作品のタイトルに共通する「Abstract frame」には抽象的な枠という意味があります。作品を制作する上でまずは模型として紙の輪を作り、それを繋げて広げたり引き伸ばしたりと試行錯誤を繰り返して作品が出来上がってくるそうです。また、それぞれの作品にはモチーフが存在したりしなかったりと、青木さんなりの自由な発想で枠の形が表現されています。


普段は仕事をしながら作家活動行う青木さんですが、今回の展示に向けて、仕事のあと、休日にもアトリエに毎日のように通い制作を継続してきたと語り、今回の大規模な個展に対する実直な気持ちが伝わってきました。
「今は、行き詰まることもなく毎日作品を作りたくてしょうがない」と語る青木さん。
制作することに非常に楽しみがあり、これからも作り続けようとする意志が強く感じられました。


 
最後に制作する上で自身の3つのキーワードとなる言葉を頂戴しました。

 ◯  習慣
 △  鮮度
 ◻  前進

青木悠太朗さんの展示は10月30日まで開催中です。どうぞお運びくださいませ。

2016年10月18日火曜日

青木悠太朗インタビュー 第3回「アーティスト」になるということ

3回にわたって掲載してきました青木悠太朗さんのインタビュー、
今回が最終回です。第10回大黒屋現代アート公募展で大賞を受賞し
作家としての活動が本格化するまでのお話、そしてこれからのお話を
お聞きしました。




―アーティストになりたいと思ったのはいつでしょう?
 子供のころから目指していたんですか?

実は、そういったことはぜんぜんないんです。高校生くらいまでは大工さんに
なりたかったですかね。実家を継ぐんだろうなと漠然と思っていました。

 中学生、高校生の時美術部だったんです。ぜんぜん運動はできないけどもともと
描いているのは好きだったので。高校の美術部の先生は版画の先生だったんですが、
毎年ひとりずつ結構大きな作品を作ったんですがそれが全国高校生美術祭で賞を
とって。なんかそれで気をよくしたんでしょうかね、美術をやってみようかなと
思って附属の大学の美術学科に進学しちゃったんです。


            
6回全国高校生美術祭に出品した「カミ」 会長賞受賞


 だから、その段階でいうと、美大とか芸大とかの存在自体を知らなかった。
そういうものがあるというのを知らなくて、受験したいというのもなかった。
予備校は行っていたんですけど、みんなどこにいくんだろうかな?と。だから
大学に入ってからそういう学校があるということを知りました。


―異色の経歴ですね

 そうなんですよ。そもそも知らなかったから、そのころ作家になるつもりは
なかったんですよね。美術館に行くのも、すごくたまに。


―では10年前の自分が今の自分をみたらびっくりするのでは?

 びっくりすると思いますよ。大学1、2年の時とかは普通の大学生でした。
普通に作品を授業の間だけ作って、帰ってまた次の日学校にきて授業を受けて。
そういう普通の大学生活をしていたので、その時の先生と話したりすると、
あの時の君がこんなにやるとは思わなかったみたいなことを言われます。
 でもそこでの出会いとか経験があったから、すごく楽しかったんです。彫刻
やることとか美術にかかわることが。で、続けたいというよりは、まだやめたく
ないみたいなかんじで。大学を出た後もやっていたいなあという感じではいました。

大学在学時の作品 「おきかけのあいまで」(2012


大学に入ってからあえて彫刻を選んだのはなぜでしょう?

 高校生の時は立体の作品を何にもやってこなかったので、すごく興味があったんです。
石を彫ったり木を彫ったり、粘土で作ったりとかいろいろできるので。その中で木彫が
とても楽しかったので一番合うかな、と。大学の時は普通に首像や動物などを彫ったり
などいろいろなことをやっていたんですが、卒業制作はその時の先生の影響で抽象の
作品になりました。


―なぜ大黒屋の公募展に応募されたんですか?

10回大黒屋現代アート公募展 展示風景

 ずっと学生の時から公募展の存在はコンペの検索サイトを見て知っていました。
それから大黒屋のHPとかをみて、過去の作品とかを見ていいなあと。でもまずその
既定のサイズのものがつくれなかった。初期の作品はとても大きい作品でできていた
ので、小さいものがつくれないなあ、応募できないなあと。そのあと時がたって
だんだん小さい作品が作れるようになり、今回は出せると思って出しました。
 大学時代は一回くらいしか出していないんですが、作家活動の1つとして公募展と
いうのも挑戦したいとは思っていました。他のコンペにも出していましたが、良い
結果は出ていないときで。


―では大賞をとったときはびっくりしたのでは?

 びっくりしました。電話がかかってきたとき、叫びましたよ。大賞です、って
言われて「わーーーーっ!」みたいな。仕事中だったので、え?っていう顔を周りに
されましたね。


―大黒屋の公募展に応募してみて、大賞をとって。実際の大黒屋の印象はどうでしたか?

10回大黒屋現代アート公募展 授賞式

 緊張しました。宿なんですけど、すごい変わっているなあ、こんな場所があるのかと。
イメージは全然違いました。作品を置いてあったりとかしてあるので、やはり公募展を
しているということは芸術家のような人たちが来るのかなあと思いました。
 あと、審査員の方に会ったときは感動しました。大賞をとったときに批評を書いて
いただくんですが、作品をみて僕の頭の中で思っているだけで文章にできないことを
文章にしてくれる。作品を見るだけでわかってくださる人がいらっしゃるということ
自体がすごくうれしかったんです。そして、大賞という評価をしてくれたということが。


―大黒屋の前に2回個展をされていますが、展示方法などは変わりましたか?


 変わりました。やりたい内容も少し変わってきてはいます。
 壁にかけるということを今回の展覧会の僕の中のテーマとしていて。平面の部分も
あり、立体のようにもみえ、そういうあるようでないものを表現するのと同じように、
手前にもあるし奥にもそういうものが見えるということ。今までだったらそういった
空間みたいなものを見えればいいという感じだったんですが、今回は少し具体的に
なれたのではと思っています。平面・立体の両方の間にいるような、ちょっと錯視
みたいなことをしたかったのかなというか。
 ギャラリーとは違った空間なので、人が行き来したり机とかイスとかがあったり
する。床に置いて見せてもよかったんですけど、せっかくきれいな壁があったので壁に
かけたいというもともとやりたいことにそれにうまく合わせることができたのかなと
思っています。


―大賞作品はもともとuntitledでしたが、今回から全作品にタイトルをつけたのは
 なぜでしょう?在学中など途中の作品までタイトルがありましたが、途中からなくした
 のには言葉で説明したくないといった理由があったのでしょうか


 タイトルをつけたのは、1回ちょっと整理しようかなと思ったからです。
 もともと僕はタイトルをつけるのがすごく苦手なんです。「これです!」みたいな
タイトルしかつけられないので学生の時の作品は主張のタイトルになってしまった。
だったら無題に見る人にゆだねる、考える、という感じにしたくてタイトルをなくして
いたんですが、一度作品のことや思っていることを改めて考え直してみて、タイトルを
つけようと。
 Abstract frameというタイトルは直訳すると「抽象」「枠組」という感じです。複数の
組み合わさってできた枠の形が変化していくことによって変わる空間のようなものを
表現している作品ということでまとめました。数字は、たとえば「12-1」だと12個の
枠がつながっている作品のうち1つめということになります。


―今後、アーティストとしてどのようなことをしてみたいですか?


 1回留学したい、外国に行ってみたいですね。すごく漠然としていますが、海外の
美術なんかも見てみたいし、ちょっと作品を見てもらいたいなということもありますし。
 一番行きたいのはメキシコでしょうか。僕は右に行けっていわれたら左に行くタイプ
で、ヨーロッパはみなさんたくさん行っているので別にヨーロッパはいいかなと。
メキシコは国の文化とかが好きで、絶対面白い。メキシコの有名な建築家でルイス・
バラガンという方がいるんですが、僕はとても好きなんです。首都メキシコシティの
郊外にある、サテライトタワーという建築の写真を本でたまたま見て、とても気になり
ました。大きな幹線道路の中央分離帯にドカーンと5つの塔が建っているんですが、
すごくかっこいい。さらにそのタワーはマティアス・ゲーリッツという彫刻家とその
ルイス・バラガンが共同で考えてつくった作品で、僕は全然知らなかったんですが、
調べたらとても作品がおもしろい。
 これはぜったいメキシコに何かあるでしょうと。

 発表はずっとしていきたいです。制作と同じように続けていると見えてくる新たな
視点や感動があると思います。僕の場合はわりとなりゆきで今に至る感じですが自分を
信じて作品を作り続けていきたい。今はまだ始まったばかりでなにもない状態なので、
作家としてはこれからだなと思っています。



青木さんは毎週末会場にお越しいただいています。
お忙しい中貴重なお話ありがとうございました。

もっと詳しいお話を聞きたい方、本日18日(火)20:00〜アーティストトークが
ございます。ぜひ御運び下さいませ。