2015年11月10日火曜日

山本雄基 アートを語る会


 11月7日に山本雄基さんによるアートを語る会が行われました。
 アートを語る会は、毎月18日に行われるのですが、
山本さんが13日からドイツで行われる個展(http://www.mikikosatogallery.com/de/ausstellungen/)のために渡独されるため、今回は少し日にちを早めて行われました。
 
 山本雄基さんの展覧会は大黒屋では今回で3回目となります。


日本のみならず海外でも活躍中の山本さん。
いったいどんなことを語られるのでしょうか。


「構造と手法」


 まずは、どのようにして描いているのか。
 山本さんの作品は、透明のアクリル絵の具が何層にも重ねられています。層によって異なる色、大きさの円や不透明なもの、下の層が見える透明なものなど、様々な円が一枚のキャンバスの上に構成されています。そういった構造の中で「ヴォイド(空洞、虚空、無、穴)」を発生させているそうです。
 円という形も山本さんの作品にとって大事な要素です。
「円というのは、自分の主張を抑えられ、根源的で抽象的な形である」とおっしゃっておりました。「全てのはじまりは点である」「点も円として考えられる」など円を扱うという山本さんの強い意志が見受けられます。



「キレイと美しい」

 山本さんはそういった手法、構造を扱いながら、一枚のキャンバスの上に美しいものを創造しています。
 円、丸、球、水玉と世の中にありふれた形をいかに美しいものに昇華し作品化するか。そもそも「美しい」とはどういったことなのか?
 今回の語る会では「キレイ」と「美しい」という事についてもお話ししていただきました。
 一週間ほど大黒屋に滞在されていた山本雄基さん。その滞在中にお客様と接する機会もあり、よく「キレイですねぇ」と言っていただけたそうです。
 ただ、山本さんの作品は「キレイ」という言葉だけではものたりない。お客様もそれを感じながら作品に魅入っている様子。
 キレイとは「装飾的」「色彩」「心地よさ」など表面的でプラスのイメージ。
 美しいとはキレイより「精神的」「抽象的」なもの、また、キレイのなかに「生」「死」「エロス」「不安」などマイナスイメージを内包しているものとおっしゃっておりました。花や星空などはその美しさを強く感じるものの例としてあげていました。
 構造、手法の話のなかで「ヴォイドを発生させている」ということをおっしゃっていたように、この「無」「虚空」こそがキレイさにはない「美しい」要素であり、山本さんの試みとその美へ探求心が伺えます。


「関係と融和」

 画面に配置された円ですが、規則的に並んでいるもの、一見ランダムに散りばめられたように見えるもの、円を描きながら正方形や三角形に見えてくるものなど様々です。一つの形から複数の形をイメージすることができ、それら複数のものがまた一つの画面のなかに収まり調和しています。山本さんは「それぞれが融和している」とおっしゃっておりました。
 このことは山本さんの自身の生き方にも深く関わっています。「偏った考え方をしない」という生き方が山本さんにあります。人の考えを均等に聞き、それらの考えを選択する。そのうちに「自分という個」が形成されているとお話ししていただきました。
 作品からもこの考えが見受けられるように、正方形(個)を形成しているのは円の集合体です。自身もまた様々な人間関係のなかから生まれた存在であるというような哲学的思考が伺えます。



 一見キレイでシンプルな表現でありながら、その奥には様々な要素が複雑に絡み合い関係し融和している山本さんの作品。ぜひ実物の作品をその目で見ていただければと思います。


山本雄基さんの展覧会は11月29日までです。